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「相続させる」と「遺贈する」では大きな違いが※2018年の内容に更新※

2011.08.01

「不動産を妻に相続させる」「預貯金を息子の嫁に遺贈する」など、「相続させる」「遺贈する」という文言は遺言の中でよく見かけます。どちらも遺言者が死亡した場合に特定の者が財産を取得することになるという意味においては似ているのですが、実は大きな違いもあります。

 

人が亡くなると、その人が生前有していた財産上の権利・義務等はその人と一定の関係にある人に移転します。このことを「相続」といいます(民法882条、896条)。一定の関係にある人とは、法定相続人のことです。つまり、法定相続人に財産を移転させることを「相続させる」と呼ぶのです。従って、法定相続人以外に対して「相続させる」と書くことはできません。

一方、「遺贈」とは遺言によって財産を無償で譲ることをいいます。譲る相手(受遺者)には特に制限はありません。従って、法定相続人に対してもそれ以外の人や団体に対しても「遺贈する」と書くことができます。

まとめると、法定相続人以外に対しては「遺贈する」としか書けませんが、法定相続人に対しては「相続させる」「遺贈する」共に書けるということになります。

しかし、法定相続人に対しては必ず「相続させる」と書くことをお勧めします。何故なら、「相続させる」と書いた方が次のような大きなメリットがあるからです。

 

≪不動産の登記手続き≫

「遺贈する」と遺言に書いた場合は、遺贈を受ける者は他の法定相続人全員と共同で所有権移転の登記申請をしなければなりません。このため、法定相続人全員の印鑑証明書等が必要となり、かなり時間と手間が掛かる場合があります。また、相続人の間で相続争いが起きた場合は、他の相続人から協力が得られず登記手続きが進まないおそれもあります。

なお、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者と遺贈を受ける者が共同で登記申請できますので、他の相続人の協力を仰ぐ必要はありません。

一方、「相続させる」遺言の場合は、指定された相続人が単独で所有権移転の登記申請をすることができますので、手続きが簡単かつスピーディーにできます。

また、「遺贈する」遺言では登記をしなければ債権者に対して自分の権利を主張することができませんが、「相続する」遺言では登記がなくても債権者に自分の権利を主張することができます。

なお、以前は不動産の登記申請のときにかかる登録免許税が、法定相続人に対しても「遺贈する」遺言の場合は「相続させる」遺言の場合の5倍とされていましたが、現在は同率とされており、この点での有利不利は無くなりました。

 

≪農地の取得≫

「遺贈する」遺言の場合は、包括遺贈(遺産の全部又はその分数的割合を指示するにとどまり目的物を特定しないでする遺贈)の場合以外は、農地法による農業委員会又は知事の許可が必要となる場合があります。従って、遺贈を受けた者が農業に従事していない等の理由で、許可が下りずに登記ができない可能性があります。

一方、「相続させる」遺言の場合は、農地法による許可は不要ですから、登記はスムーズにできます。

 

≪借地権・借家権の取得≫

遺産が借地権や借家権の場合、「遺贈する」遺言では賃貸人の承諾が必要となりますが、「相続させる」遺言の場合は賃貸人の承諾は不要です。

 

以上のように、法定相続人に対しては「相続させる」?と記した方がメリットがありますので、必ず「相続させる」と書きましょう(相続人に対して「遺贈する」と書いても、遺言自体が無効になるわけではありません)。

似たような言葉で、「与える」「譲る」「あげる」などといった文言を使っているケースもよく見掛けますが、これらは多くの場合「遺贈する」と同じ意味ととられますので、法定相続人に対しては使わない方が賢明です。

なお、公正証書遺言の場合は公証人が最適な文言を選択して文章にしてくれますから、遺言者自身がアレコレ悩んだり心配したりする必要はありません。

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筆者紹介

江頭 寛
福岡相続サポートセンター
代表取締役社長

生前対策から相続発生後の申告・納税に至るまで、皆様から寄せられる無料相談への対応や、希望する幸せな相続の実現に向けての対策立案と実行支援を、弁護士・税理士・司法書士・不動産鑑定士等の先生方をコーディネートしながら日々やらせて頂いてます。お客様にとってベストな相続並びに資産の有効活用を徹底的にサポートすることが私の最大の使命です。また、相続対策セミナーも全国各地で積極的に開催中。まずはお気軽にご相談ください。

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