皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?
土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
我々土地家屋調査士が、相続の関係でお世話させて頂く場合で多いのは、相続人の間で土地を分けあう為の分筆登記を行う時や、売買や相続税の物納の為の土地の境界確定測量、地積更正登記を行う時です。
この分筆登記・地積更正登記を行う上で、前提として通常境界確定測量を行わなければなりません。
前回までは境界線の立会、公図、地積測量図のお話をさせて頂きました。今回は、土地の境界線を表す境界標識についてのお話をします。
まずは、代表的な境界標識の種類と境界の表し方を紹介します。
<コンクリート杭> 永続性があり、境界標としては多く使用されています。
<プラスチック杭> 境界標として多く利用されています。
<金 属 標> 真鍮、ステンレス又はアルミ製。市街地でよく使用されています。
<木 杭> 一般的な目印として使用されています。
この他にも、石杭、御影石杭、刻みなどがあります。また、境界標識の頭の部分には、十字や矢印や線の切り込みがあります。その切り込み方で境界点の表す位置が変わります。境界標の中心だけが境界ではありません。
十字であれば交差した点、矢印であればその矢印の先の点(時折、矢印の延長線上の境界標角の場合もあります)、上記右から1番目の標識の様に官公庁名が入っている場合は、通常その境界標識の先までが、官公庁所有の土地であることを示しています。
ところで、境界標識が設置される場合は、大きく以下の場合があります。
【民間が設置する場合】
■売買や建築に伴い境界確定測量をした。
■土地を数筆に分ける分筆登記を行った。
■払い下げによる土地取得や団地分譲を行った。
【官公庁が設置する場合】
■国土調査、地図整備を行った。
■土地区画整理事業、土地改良事業、耕地整理事業を行った。
■道路拡張や下水道工事など官公庁事業に伴い境界立会、境界標設置を行った。
実は、測量・登記を民間が行っても、官公庁が行っても、官公庁が境界立会確認を行えば、一般的に官公庁名入りの境界標識が設置されます。※官公庁名が入っていても、官公庁の事業で行ったとは限らないと言うことです。
逆に言うと、道路沿いの境界付近に民間の境界標が設置されていて、官公庁名入りの境界が設置されていない場合、官公庁と立会を行っていない可能性があります。
(市町村によっては、官公庁名入りの境界標が無い場合もあります。また、物理的に設置出来ない場合もあります。)
以上のとおり、結局のところ境界標識の種類を見ただけでは、誰がいつ設置したかというのは分かりにくいものです。
それは、設置の理由が多種あり、時期も様々だからです。
しかし、将来隣接者から土地の境界線の立会を求められた場合、境界についての過去の経緯を知っておく事が非常に大切なことと言えます。
我々土地家屋調査士は、相続による売買や分筆の際、境界立会を行いますが、地積測量図の有無、現況構造物の築造の経緯や境界標識の有無などが重要になってきますので、その時になって慌てる事がないように、帰省された時などに、境界標の有無、実測図、地積測量図の存在を確認されたり、親子間で土地の境界線のお話をしたりしておくことをお勧めします。